ランサムウェアに備えるバックアップ|外付けドライブを「外しておく」理由
ニュースで「ランサムウェアの被害で業務停止」と見たとき、自分のパソコンは大丈夫かな、と思ったことはありませんか。
ランサムウェアは、パソコンの中のファイルを勝手に暗号化して開けなくし、元に戻すことと引き換えにお金を要求するものです。IPA(情報処理推進機構)が毎年まとめる「情報セキュリティ10大脅威」の2026年版では、組織向けの1位が「ランサム攻撃による被害」でした(10大脅威には11年連続で選ばれています)。
被害に遭ったときに頼りになるのが、ふだんから取っておいたバックアップです。バックアップで取り戻せるのは、暗号化されたファイルです。ただし、取り方によっては、バックアップまで一緒に暗号化されてしまいます。
この記事では、Windows 11 に最初から入っている機能で、ランサムウェアにも備えられるバックアップの取り方を説明します。
また、ランサムウェアとは関係なく、ハードディスクが急に壊れた時なんかにもバックアップがあれば安心です。
結論:バックアップを「つながっていない場所」にも置く
| やること | 理由 |
|---|---|
| 外付けドライブにバックアップを取ったら、パソコンから外しておく | つないだままだと、一緒に暗号化されるおそれがあるため |
| OneDrive などのクラウドにも置く | パソコンが壊れたり、家で何かあったりしても、別の場所に残るため |
| 月に一度、ファイルを1つ取り出してみる | 「取っているつもり」で止まっていることがあるため |
なぜ外付けドライブを「外しておく」のか
ランサムウェアは、パソコンから見えるファイルを次々に暗号化します。
外付けドライブをつないだままにしていると、パソコンからはそのドライブの中身も見えています。そのため、バックアップのファイルまで暗号化されてしまうおそれがあります。
実際、ランサムウェアの被害に遭った企業を調べた警察の資料でも、復旧できなかった主な原因として「バックアップも暗号化された」ことが挙げられています。警察の資料では、パソコンやネットワークから切り離した「オフラインのバックアップ」が勧められています。
もう一つ、バックアップの考え方としてよく紹介されるのが「3-2-1」です。家庭のパソコンにも使える考え方です。
- データは3つ持つ(元のデータ1つ+バックアップ2つ)
- バックアップは2種類の異なる媒体に置く
- そのうち1つは、家の外など離れた場所に置く
ランサムウェアに備えるなら、これに加えて「パソコンから切り離したコピー」も持っておくと、より確実です。
方法1:ファイル履歴+外付けドライブ(使うときだけつなぐ)
ファイル履歴は、ドキュメントやピクチャ、デスクトップなどのファイルを、外付けドライブにコピーしておく Windows の機能です。コピーした時点ごとの「以前のバージョン」から、ファイルを取り出せます。
設定のしかた
- 外付けドライブ(HDD や SSD)をパソコンにつなぐ
- コントロールパネルを開き、「システムとセキュリティ」→「ファイル履歴」を選ぶ
- 「ドライブの選択」で、つないだ外付けドライブを選ぶ
- 「オンにする」を選ぶ
コントロールパネルの検索欄に「ファイル履歴」と入れると、すぐに見つかります。
ランサムウェアに備えるなら:コピーが終わったら外す
ファイル履歴は、ドライブをつないでいる間、決まった間隔で自動的にコピーします。
ランサムウェアに備えるなら、ドライブはずっとつないでおかず、バックアップを取るときだけつなぐ形にします。
- 外付けドライブをつなぐ
- ファイル履歴の画面で「今すぐ実行」を選ぶ
- コピーが終わったら、ドライブを安全に取り外す
ドライブを外している間、ファイル履歴はコピーできません。週に一度など、つなぐ日を決めておくと続けやすくなります。
コピーの間隔と、残しておく期間
ファイル履歴の画面の「詳細設定」で、次の2つを変えられます。
- ファイルのコピーを保存する頻度(既定値:1 時間ごと)
- 保存されたバージョンを保持する期間(既定値:無期限)
使うときだけつなぐ形なら、頻度はあまり気にしなくて大丈夫です。残しておく期間を「無期限」のままにすると、外付けドライブがいっぱいになることがあります。容量に合わせて変えてください。
対象のフォルダーについて
ファイル履歴がコピーするのは、ドキュメントやピクチャ、デスクトップなどのフォルダーです。ファイル履歴の画面からは、対象のフォルダーを足すことはできません(除外はできます)。
ほかの場所にあるフォルダーも対象にしたいときは、Microsoft の説明では、そのフォルダーを右クリックし、「その他のオプションを確認」から「ライブラリ」に追加します。難しければ、大事なファイルをドキュメントなどの対象のフォルダーに移しておくのが簡単です。
ファイルを取り出すには
パソコンの様子がおかしい(ファイルが開けない、名前が変わっている)ときは、外付けドライブをつながないでください。バックアップまで暗号化されるおそれがあります。
落ち着いて取り出せるときは、ファイル履歴の画面の「個人用ファイルの復元」から、日付を選んで取り出せます。エクスプローラーでフォルダーを右クリックし、「その他のオプションを確認」→「以前のバージョンの復元」から戻すこともできます。うっかり消してしまったファイルも、同じ手順で戻せます。
方法2:OneDrive(クラウド)
OneDrive は、Microsoft のクラウドにファイルを保存するサービスです。Microsoft アカウントがあれば、5GB まで無料で使えます。
Windows 11 では、「設定」→「アカウント」→「Windows バックアップ」から、デスクトップ・ドキュメント・ピクチャなどのフォルダーを OneDrive に保存するよう設定できます(職場や学校のアカウントでは使えません)。
注意:同期は、そのままではバックアップになりません
OneDrive は、パソコンとクラウドの中身を同じにする「同期」の仕組みです。パソコンの中のファイルが暗号化されれば、暗号化されたファイルがクラウドにも同期されます。
ただし OneDrive には、元に戻すための機能があります。
- ごみ箱:消したファイルは、一定の期間ごみ箱に残ります
- 以前のバージョン:ファイルごとに、前の状態に戻せます
- OneDrive の復元:Microsoft 365 を契約している場合、過去30日以内の時点に、OneDrive 全体を戻せます
- ランサムウェアの検出:Microsoft 365 がランサムウェアの攻撃を見つけると、通知とメールで知らせ、復元の手順を案内します。Microsoft の説明では、契約していない場合でも、最初の通知と回復は無料です
つまり、気づくのが遅れると、戻せる期間を過ぎてしまうことがあります。OneDrive だけに頼らず、方法1と組み合わせると、より確実です。
2つを組み合わせる
| ファイル履歴(外付けドライブ) | OneDrive | |
|---|---|---|
| 役割 | パソコンから切り離したコピー | 離れた場所のコピー |
| 置き場所 | 手元(使うときだけつなぐ) | クラウド |
| ランサムウェア | 外しておけば、巻き込まれにくい | 暗号化されたファイルも同期される。30日以内なら戻せる機能がある |
| パソコンが壊れたとき | ドライブから取り出せる | 別のパソコンからも取り出せる |
| 費用 | 外付けドライブ代 | 5GB まで無料(それ以上は有料) |
外付けドライブが「切り離したコピー」、OneDrive が「離れた場所のコピー」の役割を持ちます。両方を使えば、元のデータ+バックアップ2つになります。ただ、OneDrive は同期なので、厳密なバックアップではありません。「3-2-1 に近い形」と考えてください。
「最後のバックアップ」はいつですか
バックアップは、取っているつもりで止まっていることがあります。
- 外付けドライブを外したまま、何か月もたっていた
- 容量がいっぱいで、コピーできていなかった
- 同期のエラーが出たまま、放っておいた
月に一度、実際にファイルを1つ取り出してみてください。取り出せて初めて、バックアップとして役に立ちます。ファイル履歴の画面には「ファイルが最後にコピーされたのは〇〇です。」と表示されるので、まずそこを見てみましょう。
パソコン全体を丸ごと保存するには
この記事では、書類や写真などのファイルのバックアップを扱いました。
Windows には、パソコン全体を丸ごと保存する「システム イメージ」という古い機能(コントロールパネルの「バックアップと復元 (Windows 7)」)も残っています。ただし Microsoft は、この機能をもう開発しておらず、将来なくなる可能性があるとしています。パソコン全体の保存が必要なら、Microsoft の説明では、ほかの会社のバックアップソフトを検討するよう案内されています。
会社のパソコンは、自分だけで判断しない
この記事は、自分のパソコンを守るための話です。
会社のパソコンには、会社のルールがあります。私物の外付けドライブをつないだり、個人のクラウドに保存したりすると、ルール違反になることもあります。会社のパソコンで「ランサムウェアかも」と思ったら、自分で直そうとせず、すぐに担当者に知らせてください。
まとめ
- ランサムウェアは、ファイルを暗号化して開けなくし、お金を要求します
- つないだままの外付けドライブは、一緒に暗号化されるおそれがあります。バックアップを取ったら外しておきます
- ファイル履歴は、コントロールパネルの「システムとセキュリティ」から設定できます
- OneDrive は同期なので、それだけではバックアップになりません。戻すための機能はありますが、期間に限りがあります
- 外付けドライブ(切り離したコピー)+クラウド(離れた場所のコピー)を組み合わせると、より確実です
- 様子がおかしいときは、外付けドライブをつながないでください
- 月に一度、ファイルを取り出せるか確かめましょう
なかなか個人のパソコンではニュースで見るような「標的にされて金銭を要求される」という企業を狙ったような攻撃をされることは少ないとされています。
ですが怪しい広告を押してしまったり、怪しいソフトウェアをインストールしてしまったときにランサムウェアが発動してしまうパターンがあります。
参考
- IPA「情報セキュリティ10大脅威 2026」
- 埼玉県警察:オフラインバックアップに関する資料(PDF)
- CISA「Data Backup Options」(英語・PDF)
- Microsoft サポート「ファイル履歴を使用したバックアップと復元」
- Microsoft サポート「Windows バックアップを使用したバックアップと復元」
- Microsoft サポート「OneDrive を復元する」
- Microsoft サポート「OneDrive を使用してランサムウェアを検出し、ファイルを回復する方法」
- Microsoft サポート「OneDrive に保存されているファイルの以前のバージョンを復元する」
- Microsoft Learn「Deprecated features in the Windows client」(英語)
